最高裁判所は10月25日、戸籍上の性別を変更するために法で要求されている「手術等により生殖能力がないこと」という要件を憲法違反として否定しました。
現在、法律上の性別変更を行うために必要な要件は、2004年に施行された性同一性障害特例法において以下の5つが挙げられています。
①18歳以上であること
②婚姻をしていないこと
③未成年の子がいないこと
④生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
⑤他の性別の性器に近似した外観を備えていること
この要件のうち④⑤については事実上手術を受けることが要求されており、特に④については卵巣や精巣の摘出など、費用負担や身体的苦痛、後遺症の恐れから、LGBTQ当事者の方が性別変更を希望する際の高いハードルとなっていました。
今回の最高裁の決定は、戸籍上は男性で、ホルモン投与を受けながら女性として生活する方が、戸籍上の性別を女性に変更するように求めた家事審判に対するものです。1審、2審は、ホルモン投与のみで要件を満たしていないことから性別変更を認めませんでしたが、最高裁は「生殖能力をなくす手術を求める規定は憲法13条が保証する『自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由』を制約するものだ」として、④の要件を求める法は違憲であり無効と判断しました。
ただし、⑤の要件については否定せず、審理を高裁に差し戻しました。
⑤の要件が存続するかは不明ですが、今後④の要件が撤廃されることで戸籍上の性別変更のハードルが下がり、希望者が増えることが見込まれます。
企業においても、自社の社員が性別変更した際の対応について考えておく必要性が増しています。社員からの相談窓口や共有範囲、社内規定の調整、トイレや更衣室使用などについてどのような対応をするのか。社員から申し出があった場合の対応を日頃から想定しておくことが、今後の企業活動においても求められています。
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